からだの構造とモーメント

最近、知り合い数人に「モーメント」って言葉の意味が分かるかどうか聞いてみたところみんな知らないという答えが返ってきました。
moment-1.png理系の人間、特に機械系の人間にとっては日常茶飯事で出てくる言葉なんですけど一般にはあまり使われない用語のようです。
日本語に訳すと「回転力」とでもいうんでしょうかね?
要はモノを回転させようとする作用のことです。
右の図のように一カ所軸を通した棒があったとします。
これに赤い矢印の方向に力を加えると当然回転しますよね。
このときの回転しようとする作用の大きさをモーメントといいます。
で、このモーメントの大きさは
モーメント=力 × 作用点と軸の距離(モーメントアーム長)
で計算できます。
何かを回転させるためには、力をかける場所と回転軸に一定の距離が必要、っていうまぁ当たり前といえば当たり前の事がこの式で表されています。
かけ算なのでどんなに力一杯軸を押しても回転はゼロということです。
で、これと体と何の関係があるの?というとこれが大ありなんですよね。
例えば、からだの関節の動きはほとんどがある軸周りの“回転”ですよね(股関節などの球関節の場合は軸ではなく点周りの回転です)。
ところが回転できる筋肉というのは存在しません
筋肉は全て伸びるか縮むかの直線運動しかできないのです。
ですので肘が曲がるのも手首が回転するのもすべてまっすぐにしか縮めない筋肉がうまくモーメントを利用して動かしているわけです。
だから、どんな複雑な動きも分解するとまっすぐにしか縮まない筋肉の動きの組み合わせでできていることになります。
そうすると動きの軸が何処にあるのかということと筋肉が何処をどの方向に引っ張っているのか?
その二つのポイントを見ていくと人体の構造や筋肉のレイアウトがなるほど、よくできているなと感心できます。
また、骨の矯正でも何処を軸に骨を動かすのかを意識して力の方向を決めないとちっとも矯正できない何てことになります。
日常の動作でもねじを締めるときは柄の長いドライバーの方が締め付ける力が弱くてすんだり、バッグを腕にかけるときは出来るだけ肘の近くにかけたり…
こんな感じでモーメントという考え方は言葉なんて知らなくても経験的に無意識に使っていることが多いです(例えばテコの原理とか)。
が、特にモーメントアーム長を意識するようになるといろいろな動きや道具の使い方が変わってきます。
何かを回転させるたり動かしたいときは力ではなくてモーメントアーム長に気をつける、これだけでいろんな作業が大分楽になりますよ。
小さい力で大きな成果を出すには距離が必要ってことですかね。

\ 最新情報をチェック /